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徳島地方裁判所 昭和25年(行)5号 判決

原告 小泉シズヱ

被告 徳島税務署長

一、主  文

原告の第一次請求を棄却する。

同予備的請求を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、請求の趣旨

原告は「被告が原告の昭和二十三年度所得額金十二万円、納税額金三万二千三百七十円と爲した更正決定が、所得額金六万円、納税額金一万一千九百二円と変更せられたことを確認する。もし右請求が認容されないときは、被告が原告の昭和二十三年度所得額金十二万円、納税額金三万二千三百十円と爲した更正決定を所得額金六万四千三十二円、納税額金一万七百十二円と変更する。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求めた。

三、事  実

被告は昭和二十四年二月二十日原告に対し昭和二十三年度所得額二十四万円、納税額八万二千二百四十二円と更正決定爲しその旨原告に通知があつたので、原告は直に高松国税局長宛審査請求を爲したところ、その後被告は原告に対し同期所得額十二万円、納税額三万二千三百七十円と再更正決定爲し、その旨原告に通知があつたのであるが、これより前右審査請求後原告は被告の職員川口某によつて店舖に臨んで実地調査を受けた結果被告官署に呼出され同人より同期所得額六万円、納税額一万一千九百二円と決定された旨告知され、同人の提示した白紙の書類に同人の求により拇印したところ、同人は原告所持の帳面の裏面に鉛筆で前記の決定額を記入したものであつて、同人の所爲は公務員の資格で、上司である被告の代理としての職責の下に行動したものであり、たとい内部的に事務処理上行違があり同人の右行爲が被告の直接の指揮認許を受けなかつたとしてもこれが爲に外部的行爲の効力に影響あるものでない。從つて右訂正の処分は有効であるからこれの存在確認を求めるものである。仮に右請求が認容されないとしても、原告は別紙計算書の通りの所得状態であるから、所得額六万四千三十二円とし、確定申告当時の扶養親族二名に対する扶養控除を爲した上納税額一万七百十二円とし、右の限度で被告の処分の変更を求めるものである。」と述べた。(立証省略)

被告代理人は、本案前の抗弁として、原告に対する昭和二十三年度分所得税更正決定通知及び納税告知書は昭和二十四年二月二十日発送せられ、原告より同年三月九日審査請求書が提出せられ、同年七月十六日被告より更正決定の訂正通知が爲され、昭和二十五年一月二十七日本訴が提起されたのであるから、行政事件訴訟特例法第五條に定められた六月の出訴期間を経過している本訴は不適法として却下されたい。と述べ、本案につき請求棄却の判決を求め、答弁として、原告請求原因事実の内、原告が肩書住所で青果物、加工水産物等の販賣業を爲していること、被告が昭和二十四年二月十二日原告に対し昭和二十三年度所得額二十四万円、納税額八万二千二百四十二円と更正決定爲し、原告が高松国税局長宛審査請求を爲し、被告が原告に対し同期所得額十二万円、納税額二万八千七百八十五円(原告は三万二千三百七十円と主張する。)と再更正決定をなしたことはいづれもこれを認めるがその余を全部否認する。先づ第一次請求に関しては、所得額及び納税額の決定は、所得税法第四十四條、第四十六條及び同法施行規則第六十四條により明な通り、納税地の所轄税務署長がこれを爲すことになつていて、税務署員個人が爲すべきものでないから、被告の署員が原告主張のような行爲に及んだとしても該行爲は被告の処分行爲として何ら効力を発生しないものである。次に予備的請求につき被告は原告住居に係官出張の上実額調査を爲したが、正確な帳簿なく目的を達成することが困難であつたので店舖の位置、在庫商品の状況、顧客の出入状況及び前述の各種調査を綜合勘案の結果一日の賣上金一千七百二十円と推定し、年間賣上金六十万円、その利益割合二割程度と見込み、所得金額を十二万円と訂正決定を爲したわけである。訴状添附の原告作成計算書は次の諸点で誤謬がある。(イ)右計算書の昭和二十三年十月分の仕入金額は二万五千四百三十円となつているが、大藏事務官三宅一夫が徳島市役所で調査をしたところによると、昭和二十三年九月十九日より同年十二月三十一日までの原告の蔬菜仕入金額中十月分の仕入高三万五円であり、その間四千五百七十五円四銭の差額を生じ、尚又右仕入金額は蔬菜以外に青果物、塩干物その他の食糧品があるので右の差額は更に大となるわけである。(ロ)右計算書は賣上金から仕入金を差引き利益金を出していて、仕入金額は当月分のものと思料されるが、右によれば繰越商品の存在によつて計算の正確さは期待できない筋合であり、かりに仕入金額は当月分のものでなく、賣上金額に対する仕入原價であるとしても、商品の繰越高、月末棚卸高が算出されない限り正確な額が判明しないわけである。(ハ)右計算書と原告提出の審査請求書に添附した計算書と対比すると、年間賣上金については、前者は四十五万五千百三十四円で、後者は三十九万七千七百七十三円であり、年間仕入金については、前者は三十九万二千百二円で、後者は三十三万九千円であつて全く符合しない。(ニ)右計算書仕入金額につき大藏事務官三宅一夫の作成した調査復命書乙第三号証)によれば、昭和二十三年六月三日より同年十二月六日までの徳島生必組合よりの原告仕入金は一万六千五百九十五円八十三銭であり、川村食料品店よりの仕入金も一万円程度と思料される。又大藏事務官前川高作成の阿部定夫商店に関する聽取書(乙第四号証)によれば、昭和二十三年中の原告仕入金は四万八千円となる。大藏事務官土井照則の作成した竹田良多商店に関する調査顛末書(乙第五号証)によれば、原告の昭和二十三年中の仕入金は三万円となる。その他原告は直接農家その他業者からの仕入も相当あるので右各調査額以外に相当の仕入高を予想することができるのであつて、その合計額は計算書のそれを超過している。(ホ)徳島税務署のなした世帶調査(乙第六号証)によれば、原告の昭和二十三年中の賣上高は七十三万二千円であり、食糧品業者の平均利益率二%を適用してその所得は十四万六千円となる。右利益率については原告自ら昭和二十三年分確定申告書(乙第七号証)中にこれを引用している。(ヘ)原告提出の帳簿(甲第一号証)中昭和二十三年九、十月分の仕入高と原告の徳島市役所よりの仕入高(乙第一号証)並に徳島生必組合よりの仕入高(乙第三号証)と対照すると別紙の通り原告帳簿記載額が過小となる。(ト)その他同計算書と原告帳簿(甲第一号証)記載と対照すると別紙のような差異を発見することができる。右のような次第であるから被告の本件課税処分は適法であり、原告の主張は誤多く到底首肯できないものである。尚原告の審査請求に対し高松国税局長は現在に至るまで審査決定を了していない。と述べた。(立証省略)

四、理  由

原告が肩書住所で青果物、加工水産物等の販賣業を爲していること、被告が昭和二十四年二月十二日原告に対し昭和二十三年度所得額二十四万円、納税額八万二千二百四十二円と更正決定爲し、原告が高松国税局長宛審査請求を爲し、被告が原告に対し同期所得額十二万円、納税額二万八千七百八十五円(原告は三万二千三百七十円と主張する)と再更正決定を爲したことはいずれも双方爭ない。先ず原告の第一次請求につき職権をもつて訴の適否を檢討するに、右訴は要するに被告の原告に対する課税処分の存在確認を求めるものであるから、行政事件訴訟特例法第一條の「公法上の権利関係に関する訴訟」に属するものであつて、この場合訴の相手方は公法上の権利関係の帰属主体である国であつて、被告税務署長はその適格を有しないものと解するのを相当とする。よつてこの点に関する原告の請求は理由がない。次に予備的請求につき訴の適否を考えるに、原告の訴の要旨は、被告が原告に対して爲した所得額十二万円、納税額二万八千七百八十五円(原告は三万二千三百七十円と主張する。)の再更正決定を請求趣旨の通り変更せられたいというにあるから所得税法第五十條第五十一條行政事件訴訟特例法第五條の規定によりその出訴期間は右再更正決定の爲された時を基準として訴の適否を決すべきところ、原告は右決定の通知が昭和二十四年七月十六日爲されたという被告の主張に対し明らかに爭うところがなくこれを自白したものとみなし、本訴は右特例法の定により原告が右処分を知つた日から六月後である昭和二十五年一月十六日までにこれを提起すべきところ、本訴の提起が昭和二十五年一月二十七日であることは記録上明白であつて、出訴期間を徒過した不適法な訴であることを免れない。從つてこの点に関する被告の抗弁は理由がある。よつて訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九條を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 今谷健一 合田得太郎 三木光一)

(別紙目録省略)

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